はじめにこちらは、株式会社を設立する際に作成する定款について、テレビ電話を利用して公証人の認証を受ける手続きを解説する記事です。
合わせて、今年から変更になった定款認証の公証人手数料の値下げについても解説します。
テレビ電話方式の定款認証について
テレビ電話方式が使える条件 その1
遠方の公証役場で定款認証をする場合は、テレビ電話方式はわざわざ現地に行かずに済み便利なのですが、テレビ電話方式を利用するには、電子定款に電子署名をした上でオンライン申請をするという条件があります。
発起人自ら申請する場合は、発起人のマイナンバーカード等で電子定款に電子署名し、発起人を嘱託人(申請人)としてオンライン申請します。
発起人が司法書士等に手続きを依頼する場合は、発起人が委任状に実印を捺して(又は電子委任状に発起人が電子署名して)、代理人が電子定款に電子署名し、代理人を嘱託人としてオンライン申請します。
なお、代理人が嘱託人として申請した場合は、テレビ電話で公証人と面談する者は、嘱託人である代理人に限られます。
テレビ電話方式が使える条件 その2
また、テレビ電話を利用出来るインターネット環境(パソコン・スマートフォン・タブレット)が必要です。
パソコンの場合、Google Chromeが推奨ブラウザとされています。合わせて、WEBカメラも必要です。
スマートフォン・タブレットの場合は、FaceHubアプリ(無料)が推奨されています。
事前にインストール等の準備を済ませておきましょう。
テレビ電話方式の手続きの流れ
①事前チェック
事前に、認証を受けたい公証人に対して、次の資料をメール又はFAX等の方法で送り、チェックを受ける。
・定款の文案
・実質的支配者となるべき者の申告書
・発起人の印鑑証明書
・実質的支配者の顔写真付き本人確認書類
②認証の予約
公証人から、定款文案と実質的支配者の事前審査が問題無かった旨の連絡を受けたら、テレビ電話方式による認証を希望する日時を予約する。
予約する方法は公証役場によって異なり、公証役場のHPの専用フォームから申し込むか、電話・メール等で申し込む。
予約後、公証人から、テレビ電話用のURLと認証手数料の振込先が記載されたメールが送られてくる。
認証手数料の支払いは、⑤の予約日当日までに済ませておく。
なお、テレビ電話方式を利用することでの手数料への影響は無い。(振込手数料は嘱託人負担)
③必要書類の発送
認証を受ける公証人宛に、下記の必要書類を送る。
・定款本文を合綴し、発起人全員分の実印が捺印された委任状
・発起人全員分の印鑑証明書(有効期限3か月)※原本還付を希望する場合は、「この写しは原本と相違ない」と記載(原本証明)したコピーも提出する
・実質的支配者となるべき者の申告書
・実質的支配者の顔写真付き本人確認書類のコピー
・代理人の顔写真付き本人確認書類のコピー
・定款の謄本や申告受理及び認証証明書の交付を希望する場合は、その請求用紙
・返送用レターパック
④認証嘱託送信
予約日までに電子定款の嘱託情報をオンライン申請する。
⑤テレビ電話による認証
予約日当日、予約時間になったら、公証人からのメールに記載されたURLをクリックして、担当公証人とテレビ電話をする。
その際、嘱託人の本人確認のため、自身の氏名住所等の情報を口述し、カメラの前で本人確認書類の原本を提示する。
概ね5分もあれば、テレビ電話は終了する。
⑥データをの受け取り
テレビ電話終了後、定款認証の手続き完了メールを受信すると、認証文が付された定款のデータをダウンロードできる。
⑦定款の謄本と領収書の受け取り
後日、定款の謄本と領収書が入った返送用レターパックが送られてくる。
公証役場には管轄があります
定款認証は、設立会社の本店所在地を管轄する法務局(又は地方法務局)に所属する公証人にしてもらう必要があります。
つまり、本店所在地が大阪府内なら、定款認証は大阪府内の公証役場の公証人にしてもらう必要があります。
法務局の管轄については、法務省のこちらのリンクを、各県の公証役場の一覧は、こちらのリンクを参照してください。
テレビ電話を利用した定款認証は、令和2年5月11日から開始されましたが、それ以前は、現地の公証役場まで足を運び、公証人と対面する必要がありました。
つまり、普段大阪に住んでいる発起人が、事業の都合により、鹿児島県に株式会社を設立する場合は、鹿児島県まで行く必要があったのです。
定款認証手数料の値下げについて
変更の内容
株式会社の定款認証の公証人手数料について、昨年までは一律5万円であったところ、今年1月1日から、設立会社の資本金の額に応じて、次の内容に変更されました。
- 資本金の額が100万円未満なら、3万円
- 資本金の額が100万円以上300万円未満なら、4万円
- 資本金の額が300万円以上なら、5万円
これまで、電子認証の場合なら、約5万2000円程度の実費が掛かっていたところ、1万円又は2万円安くなる可能性があるわけですね。
注意点
ただし、減額の適用を受けるにあたり、一つ注意点があります。
認証を受ける定款には、資本金の確定額を記載する必要があります。
確定額ではなく、「設立に際して出資される財産の最低額」の記載でも、認証手続き自体は問題無く済ませることができますが、「最低額」を定款に記載した場合は、定款認証後に資本金の額を1万円に確定させるつもりであったとしても、公証人の手数料は5万円となります。
例
減額適用有り 公証人手数料3万円
「第◯条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金1万円とし、その全額を資本金とする。」
減額適用無し 公証人手数料5万円
「第◯条 当会社の設立に際して出資される財産の最低額は、金1万円とする。」
何らかの文献を参照しながら、ご自身で定款を作成する予定の方は、文献が古くて、この点に対する配慮がなされていない可能性がありますので、御注意ください。
最後に
『【解説】テレビ電話を使った定款認証と公証人手数料の値下げ【会社設立】』いかがでしたか?
日頃、会社設立をさせていただくお客様の本店所在地は大阪府とその隣県ばかりなので、中々テレビ電話認証を使う機会が無かったのですが、先日、珍しく遠方の都道府県に会社設立をするご依頼をいただいたので、そのときの経験を基に解説させていただきました。
実際に体験した感想としては、「思ったよりも簡単だった」です。
通常の対面認証と比べて増えた手間としては、必要書類の郵送と公証人手数料の振込くらいです。
お客様に新幹線や飛行機の交通費を何万円も負担していただいて、往復に何時間も費やすことに比べたら、負担は無いも同然でしょう。
また遠方の会社設立があればテレビ電話認証を利用すると思いますし、必要書類を郵送する時間的余裕があるならば、隣県の場合も利用するかもしれません。
もし、一般の方がこの記事を読んで、ご自身で会社設立の定款の作成と認証手続きをするのに不安を感じた場合は、私にご相談いただければと存じます。
この記事が何かの参考になったのならば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
執筆者 司法書士・行政書士 木戸瑛治