はじめに

こちらは、会社設立をする際に必要な定款の事業目的を作成するときの注意点を解説する記事です。

どちらかというと、ご自身で会社設立をされる方向けです。

 

 

事業目的が多いのは良くない?

これまで様々な会社の登記を手掛けさせていただきましたが、定款に事業目的をたくさん記載している会社をしばしば見かけることがあります。

経営者の方に現在の状況をお伺いすると、実際には、定款に記載されていても、メインの事業以外は実施することなく、そのまま年数を経ている会社が少なくないという印象です。

おそらく、「すぐにメイン以外の事業をするわけではないけど、後から目的を追加する登記をすると費用が掛かるから、最初に一杯入れておこう」という考えではないかと思われます。

事業目的の数が多くても、それで設立登記の印紙代(登録免許税)が上がったりはしません。

一方、会社設立が済んだ後に事業目的を追加する変更登記をすると、登録免許税が3万円掛かります。

加えて、司法書士に手続きを依頼すると、安くとも2万円以上の手数料が必要になるでしょう。

「それなら経費削減のため、最初に一杯入れておこう」というわけです。

あるいは、専門家やコンサルタントがそのように説明して誘導していることがあるかもしれません。

しかし、もうそのやり方のままでは良くない結果を招くことになりかねないのです。

 

 

銀行口座の開設がしにくくなってきている

幾人かの知り合いの銀行員や税理士の方から聞いたところによると、最近、法人名義の銀行口座開設がしにくくなったそうです。

その理由の一つが、マネーロンダリング規制の強化です。

以前より、「日本はマネーロンダリングに対する規制が弱い」と指摘されており、国際社会からの要請により規制が強化されました。

この影響により、会社の実体に関する審査が厳しくなり、口座開設がしにくくなったわけです。

そして、審査のポイントの一つが事業目的です。

 

 

こんな事業目的は要注意

このような事業目的になっている場合は要注意です。

①当面実施する予定のない事業目的が多く含まれている

②会社の規模に照らして不相応に事業目的が多い

③事業目的の分野が多岐に渡っていて、それぞれの関連性が薄い

④許認可が必要な事業が含まれていて、現時点でその許認可要件を満たしていない

要するに、「起業したばかりなのに、本当にこんなにたくさん事業できるのかな?この会社怪しくないかな・・・?」という疑問を金融機関側に持たれてしまうわけです。

場合によっては、金融機関から当面必要な事業目的以外の削除を求められることもあります。

そうすると、事業目的を削減する変更登記をしなければならなくなり、登録免許税3万円が掛かってきます。

設立間もない、まだ資金繰りに余裕が無い時期にこの出費は痛いです。

 

 

事業目的に優先順位をつけてみよう

事業目的が多すぎると良くないのはわかった、しかし、いざ事業目的を考え始めると、「アレもやりたい、コレもやりたい」となるかもしれません。

そんなときは、事業目的に優先順位のランクを付けてみてはどうでしょうか?

A.メインとなる事業。既に個人事業主として事業を手掛けている、又は設立後すぐに取り掛かるもの。

B.今すぐには取り掛からないが、2~3年のうちにはやりたいと考えている事業。

C.具体的な時期は未定だが、いつかやれたらいいなと考えている事業。

Aは、絶対に定款に盛り込みましょう。

Cは、今回は定款に入れるのはやめておき、後日の事業拡大のときまで置いておきましょう。

Bは、もう一度実現可能性などを検討していただき、AB合計で10個を超えるようであれば、一部削除することを検討してみてください。

事業が軌道に乗り、「あのとき出来なかったBCの事業もできるようになったから、定款に入れよう、登記しよう」と思えるようになったときには、きっと登記費用の負担感は減っていることだと思います。

 

 

他の審査ポイント

口座開設の審査で問われる大きな要素は、会社・法人としての実体です。

事業目的以外の会社としての実体が疑われる要因としては、次のものが挙げられます。

・資本金が極めて少額

・会社の本店住所が、役員個人の住所やバーチャルオフィス

・会社の固定電話やホームページが無い

 

 

最後に

『【解説】定款の事業目的を作成するときの注意点【会社設立】』いかがでしたか?

会社設立後の銀行口座開設を見据えた視点から、私見を交えて解説させていただきました。

もし、一般の方がこの記事を読んで、ご自身で定款の作成をするのに不安を感じた場合は、私にご相談いただければと存じます。

この記事が何かの参考になったのならば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

執筆者  司法書士・行政書士 木戸瑛治

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