はじめに

皆様、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

さて、2023年の最初の記事ですが、遺言について書いてみたいと思います。

昨年は、これまでよりも多くの遺言書作成に関する相談を受けました。

そこで改めて色々と考えさせられましたので、私が考える『遺言書を書いたほうがいい人』についてまとめてみました。

 

遺言書を書いたほうがいい5つのケース

①子供がいない夫婦が配偶者に全部相続させたい場合

遺言が無い場合は、法定相続人全員で話し合い遺産分割協議をして、誰が財産を相続するのかを決めることになります。

もし、直系卑属(子供・孫)がおらず、直系尊属(親・祖父母)もすでに全員亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹(場合によっては甥・姪も)が法定相続人となります。

しかし、自分の財産を配偶者の方に全て相続させたい場合は、兄弟姉妹と遺産分割協議をしなければならない事態はできるだけ避けたほうが良いです

理由は、次の2つです

  1. 法定相続人の数が大幅に増えかねず、手続きの費用も手間も大幅に増える
  2. 兄弟姉妹の相続人から、法定相続分に見合うだけの遺産の分配を求められる場合がある。

 

もし、配偶者の方に全財産を相続させる内容の有効な遺言書があれば、没後の手続き負担は大幅に減ります。また、兄弟姉妹(と甥・姪)には遺留分がありませんので遺産の分配をする必要もありません

過去の担当事案の依頼者の方に言われた印象に残っている言葉があります。

「なんで、妻の私が相続するのに、ずっと疎遠だったあの人たち(兄弟姉妹)に協力してもらわないと駄目なの?」

 

 

②推定相続人の判断能力に問題がある場合

遺産分割協議は「法律行為」にあたるため、法定相続人の方には「意思能力(いわば判断能力)が必要となります。

もし、法定相続人のうち、脳機能の各種疾患・障害(認知症、事故や脳梗塞などによる高次脳機能障害、知的障害、精神障害など)により、遺産分割協議をできるだけの判断能力がない方がいる場合は、有効な遺産分割協議ができません

そうすると、その方のために法律行為ができる人間、すなわち成年後見人を裁判所に選任してもらう必要があります。

現状、遺産分割協議のためだけのスポット的な成年後見人は制度化されていませんので、後見が一旦開始すると、本人の能力が回復しない限りは、本人が亡くなるまでずっと続くことになります。

この事態を避けたい場合は、遺言書を書くべきです。

相続する人間を指定していれば、遺産分割協議をする必要が無いからです。

また、相続する人が認知症等の問題を抱えている場合は、合わせて、遺言執行者の指定もしておいた方が良いです。

助けてくれる親族の方や法律専門職に遺言執行者になってもらえれば、実際の相続の手続きは、判断能力に問題がある相続人の方ではなく、遺言執行者が行いますので、手続き面での不安は無くなります

 

 

③財産を多く渡したい(渡したくない)相続人がいる場合

例えば、次のように、遺産分割協議だと自分の希望がまず叶えられそうにない場合です。

  • 前の配偶者との間の子にではなく、今の配偶者とその人との間の子にだけ財産を遺したい。
  • 仲が悪くて疎遠になった子、縁を切った子には財産を遺したくない。いつも身近にいて自分を気にかけてくれる子に遺したい。
  • 子供には全員平等にしてあげたいが、1人の子には生前のうちに十分な金銭的な支援をしてあげたので、相続の際には、他の子に多く遺してあげたい。

ただし、配偶者直系卑属(子・孫)・直系尊属(親・祖父母)には、遺留分を請求できる権利がある点には注意してください。

 

 

④特定の財産を特定の相続人に遺したい場合

例えば、次のように、自分の希望を確実に叶えたい場合です。

  • 配偶者に自宅の不動産を遺したい。
  • 先祖代々の土地を墓を守っていく子に遺したい。
  • 自分が所有・経営する会社の株式を、後継者となる子に遺したい。

こちらも、遺留分には注意してください。

 

 

⑤相続人以外に財産を遺したい場合

相続人以外の人に財産を遺したい場合は、遺言を書くべきです。

例えば、次の人たちです。

  • かわいがっていた甥、姪に遺したい。
  • 自分の介護をしてくれた子供の配偶者に遺したい。
  • 最期の時を過ごしてくれた内縁の配偶者に遺したい。
  • 養子縁組はしていなかったが、我が子同然に育ててきた配偶者の連れ子に遺したい。

こちらも、遺留分には注意してください。

 

 

まとめ

『【解説】こんな人は遺言書を書いた方がいい!5つのモデルケース』いかがでしたか?

今回の記事をまとめると、遺言書を書いたほうがいいケースは、

  1. 子供がいない夫婦が配偶者に全部相続させたい場合
  2. 相続人に認知症などの判断能力に問題を抱えている人がいる場合
  3. 財産を多く遺したい(遺したくない)相続人がいる場合
  4. 特定の財産を特定の相続人に遺したい場合
  5. 内縁の配偶者など法定相続人じゃない人に財産を遺したい場合

となります。

もし、一般の方がこの記事を読んで、ご自身だけで遺言書を作成するのに不安を感じられたり、遺言書を書いたほう良いのか迷われた場合は、私にご相談いただければと存じます。

この記事が何かの参考になったのならば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

執筆者  司法書士・行政書士 木戸瑛治

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